Soil & Pot
9 soils ・ 7 recipes
用土と鉢
主要 9 種の用土カタログ・樹種別配合・鉢合わせの原則を一冊にまとめました。
01用土に求められる 3 要素
盆栽の用土は「鉢花の土」とは別物です。鉢の中に長期間根を留めながら、 毎日水やりに耐え、根を腐らせず、しかも水切れもさせない — この矛盾を成り立たせるために、次の 3 つの性質を高い水準で同時に満たす必要があります。
排水性
余分な水が鉢内に滞留せず、すぐに底穴から抜けること。根腐れの予防。
通気性
粒同士の隙間に空気が通ること。根は呼吸している。
保水性
適度に水分を保持し、水やりサイクルを成立させること。
単一の用土でこの 3 つを同時に最高水準で満たすものは存在せず、複数の用土を配合して目的の性質に近づける — これが盆栽用土の基本思想です。
02主な用土カタログ
盆栽で常用する用土を 9 種類に絞り、それぞれの性質と役割を表に整理しました。 評価記号は ◎ 優・○ 良・△ 並・× 不可。
赤玉土
あかだまつち盆栽用土の基本。8 割の樹種でベースに据える。
- 主成分・産地
- 関東ローム層の赤土を乾燥・粒選別したもの
- 粒度
- 極小 (2-3mm) / 小 (3-6mm) / 中 (6-12mm) / 大 (12mm-)
排水◎通気◎保水○役割: ほぼ全樹種の主成分 (5-7 割)。粒度で根域の細かさを調整する。
注意: 粒が崩れると排水・通気が落ちるため、硬質 (二本線・三本線) を選ぶと植替えサイクルが伸びる。一般的な「赤玉土」だけだと数年で泥化する。
鹿沼土
かぬまつち強酸性・通気性◎。さつき/ツツジには単用も。
- 主成分・産地
- 栃木県鹿沼地方の軽石質火山灰土
- 粒度
- 極小 / 小 / 中
排水◎通気◎保水◎役割: 酸性を好む樹 (さつき・ツツジ・石化檜) のベース、雑木の保水補強。
注意: 湿ると色が黄色〜橙に変わり、水やりの目安として優秀。崩れやすいので硬質鹿沼を推奨。
桐生砂
きりゅうずな鉄分を含む硬い火山砂。松柏の排水補強の定番。
- 主成分・産地
- 群馬県桐生地方の火山砂
- 粒度
- 小 / 中
排水◎通気◎保水△役割: 松柏 (黒松・五葉松・真柏) の排水補強として 3 割前後を混ぜる。
注意: 鉄分を含み根の活着がよい。粒が硬くシーズン中に崩れにくいのが利点。
富士砂
ふじずな黒色の細粒。小品・ミニの引き締まった鉢面に。
- 主成分・産地
- 富士山周辺の火山砂
- 粒度
- 小 / 中
排水◎通気◎保水△役割: 小品〜ミニ盆栽の排水補強と化粧砂兼用。
注意: 黒色で鉢面が引き締まる視覚効果。桐生砂より細目の用途向き。
川砂
かわすな細目で清潔。挿し木・化粧砂・苔床に。
- 主成分・産地
- 河川堆積の天然砂を洗浄したもの
- 粒度
- 小 (1-3mm)
排水◎通気○保水△役割: 挿し木の発根床、化粧砂、苔の床土に少量。
注意: 栄養はほぼ無いので主用土としては使わない。pH 中性。
軽石
かるいし鉢底に敷く排水層の定番。大品向きの排水補強にも。
- 主成分・産地
- 火山由来の多孔質軽石
- 粒度
- 大 (10-20mm) / 中
排水◎通気◎保水△役割: 鉢底石として鉢全体の排水を確保。大品盆栽の用土にも 1-2 割混ぜる。
注意: 鉢底ネットの上に 1cm 程敷くのが基本。崩れにくく半永久利用可。
腐葉土
ふようど保水・保肥のために雑木に少量。盆栽では控えめに。
- 主成分・産地
- 落葉広葉樹の葉が分解した腐植土
- 粒度
- 繊維状
排水×通気△保水◎役割: 雑木 (もみじ・けやき) で 1 割程度。保肥力と保水を補う。
注意: 盆栽では入れすぎ厳禁。多用すると排水が落ち根腐れの原因に。鉢花用とは違うバランス感覚で。
ケト土
けとつち粘土質で成形可。苔玉・石付き根巻きの専用土。
- 主成分・産地
- 葦や水草が水中で炭化堆積した粘土土
- 粒度
- 粘土塊
排水×通気×保水◎役割: 苔玉成形、石付き盆栽の根巻き、隙間埋め。
注意: 通常の植替えには使わない。乾燥保管できないので必要分だけ購入する。
水苔
みずごけ乾燥ミズゴケ。植替え時の根巻きと保湿に。
- 主成分・産地
- ニュージーランド産等の乾燥ミズゴケ
- 粒度
- 繊維
排水△通気◎保水◎役割: 植替え時の根巻き、寄せ植えの隙間、挿し木の発根床。
注意: 水でしっかり戻してから使う。pH 弱酸性。
03樹種別の配合例
樹種カテゴリごとの基本配合を 10 等分の比で示します。 地域・季節・樹齢で微調整しますが、まずはこの比率を覚えておくと 応用が利きます。
松柏 (黒松・五葉松)
黒松 ・ 五葉松 ・ 杜松 ・ 蝦夷松- 赤玉 6
- 桐生 3
- 富士 1
- 粒度
- 小〜中粒。大品は中粒、ミニ・小品は小粒。
松柏は根を乾湿のメリハリで育てるため排水・通気を最重視。鉱物質を 4 割入れて根詰まりを遅らせる。
真柏
真柏 ・ 杜松- 赤玉 5
- 桐生 3
- 鹿沼 2
- 粒度
- 小〜中粒
真柏は乾燥を好むが新葉展開期は適度な水分を要するため、鹿沼土で保水を補う。
雑木 (落葉樹)
もみじ ・ けやき ・ ぶな ・ 楓- 赤玉 7
- 桐生 2
- 腐葉 1
- 粒度
- 小〜中粒。新緑期のためにやや保水寄り。
雑木は葉の蒸散が多く水を欲しがる。腐葉土を 1 割だけ加えて保水と保肥を底上げする。
さつき・ツツジ
さつき ・ 皐月 ・ 山つつじ- 鹿沼 10
- 粒度
- 小粒〜中粒の硬質鹿沼単用
酸性土壌を好む樹種。鹿沼土単用が定番で、赤玉を混ぜると pH が中性寄りになり花つきが落ちる。
花もの・実もの
長寿梅 ・ 梅 ・ 姫りんご ・ 梅もどき ・ ピラカンサ- 赤玉 7
- 桐生 3
- 粒度
- 小〜中粒
開花・結実期に水を切らさないよう赤玉多めにしつつ、根腐れを防ぐため桐生砂で排水確保。
草もの・山野草
雪割草 ・ イワヒバ ・ ハクモウギ ・ 山野草寄せ植え- 赤玉 5
- 鹿沼 3
- 富士 2
- 粒度
- 極小〜小粒
繊細な根を傷めない極小粒で、保水と通気のバランス重視。山野草は加湿に弱い種が多いので富士砂で排水補強。
ミニ盆栽 (10cm 以下)
ミニ盆栽全般- 赤玉 7
- 桐生 3
- 粒度
- 極小粒 (2-3mm) のみ
鉢が小さいため粒も小さく揃える。中粒以上は根の活着スペースが取れず崩しやすい。
04鉢の形と樹種
鉢の形は樹形と樹種に強く結びついています。形を間違えると、 どんな名木でも野暮ったく見えます。
楕円鉢
だえんばち雑木・寄せ植え・草もの
柔らかく安定感のある印象。最も汎用性が高い。
長方鉢
ちょうほうばち松柏・直幹・銘木
格調高くフォーマル。樹格のある古木に合わせる。
正方鉢
せいほうばち直幹の小品・松柏
シャープで現代的。直線の効いた樹姿と相性◎。
円形鉢
えんけいばち文人木・草もの・寄せ植え
柔らかく女性的。線の細い樹を引き立てる。
木瓜鉢
もっこうばち雑木・花もの・実もの
縁に切れ込みが入った装飾鉢。装飾性が強く花鉢として人気。
懸崖鉢
けんがいばち懸崖樹形 (流れ下る樹形)
深鉢。崖から垂れる樹姿に必須の専用鉢。
05鉢の素材
泥もの (素焼)
釉薬を掛けない素焼鉢。通気性が良く根に優しいため、松柏や若木の養成に多用される。赤泥・紫泥・烏泥など色味で表情が変わる。
釉薬鉢
色釉を掛けた化粧鉢。雑木・花もの・実ものに合わせ、季節感と彩りを演出。瑠璃釉・均釉・青磁釉などの定番がある。
中国鉢 (古渡)
宋〜清代の中国鉢で骨董価値あり。銘木・名品に合わせる伝統。古渡 (こわたり) と呼ばれ盆栽鉢の最高峰として珍重。
国産作家鉢
現代の作家による一品物。常滑・愛知・茨城に主要産地。樹の個性に合わせて選ぶ楽しみがある。
06鉢の色合わせ
色合わせの基本は「樹の主役を引き立てる」こと。 葉色・花色・実色を見て、補色寄りの暗色 or 淡色で背景に徹するのが鉄則です。
雑木 (緑葉)
→ 紺釉 / 白磁 / 青磁 / 瑠璃釉新緑〜紅葉まで色相が動く樹は、寒色の鉢で葉色を引き立てる。
花もの (赤花)
→ 白釉 / 浅黄釉 / 薄青磁花を主役にするため淡色鉢で背景に徹する。
花もの (白花)
→ 浅緑釉 / 薄紫釉 / 瑠璃釉淡い花色には鉢で重さを足し、構図に骨格を作る。
実もの (赤実・橙実)
→ 紺釉 / 黒泥 / 濃緑釉実の色を最大限引き立てる補色寄りの暗色を合わせる。
松柏
→ 赤泥 / 紫泥 / 茶系泥もの古色を帯びた泥鉢で樹皮の渋みと呼応させる。釉薬は基本使わない。
07鉢のサイズ目安
樹高と鉢のバランスは盆栽の見栄えを大きく左右します。 以下は古典的な目安。あくまで起点として、樹格や席飾りの意図で調整してください。
| 寸法 | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 鉢の縦 (口の長辺) | 樹高 ÷ 1.5〜3 が目安 | 大品は 1.5、小品〜ミニは 2〜3 倍の倍率で計算。 |
| 鉢の深さ | 幹の根元径 × 1〜2 | 松柏は浅め (×1)、雑木は中 (×1.5)、懸崖は深 (×2 以上)。 |
| 鉢の口径 | 樹の根張りの幅以上を確保 | 鉢縁ギリギリだと根を切り詰めることになり活着が悪い。 |
| 鉢底穴 | 口径 12cm 未満で 1 穴、それ以上は 2 穴以上 | 古い鉢は鉢底穴が小さいことがあるので排水確認を。 |