秋が深まり、もみじ盆栽が色づく季節になりました。もみじの盆栽は春の芽出し、夏の青葉、秋の紅葉、冬の裸木と一年で姿を大きく変えますが、紅葉の時季は鑑賞の主役になります。さいたま市大宮盆栽美術館の収蔵品解説を手がかりに、もみじ3点の「名前」に込められた紅への視線を読んでいきます。
山もみじ「紅陵」— 紅い丘を意味する銘
美術館の収蔵品情報によると、山もみじ「紅陵(こうりょう)」は推定樹齢120年、幅120cm・高さ69cmの作品です。太くたくましい根張りから3本の幹が扇状に広がる姿で、夏から秋にかけては大地を覆うかのように青葉が豊かに繁ると解説されています。
「紅陵」という銘は、紅葉の時季の見事さから「紅い丘」を意味するものとして付けられた、と同館は説明しています。盆栽の銘は、樹の姿や季節の印象をひと言に託したもの。まず樹形の力強さがあり、その上で秋の色が丘のように広がる情景が思い浮かぶ、という順序の名づけが面白いところです。
もみじ「清玄」— 春・夏・秋で色が巡る品種
もみじ「清玄(せいげん)」は推定樹齢90年、高さ96cmの作品です。同館の解説では、清らかで奥深い趣きを意味する品種名が付けられた本種の特徴は、春に鮮やかな紅色の若葉を芽吹くことにあるとされています。若葉は夏にかけていったん青葉に変わり、秋には再びみごとな紅色に染まる、と続きます。
つまり清玄は、同じ一本の樹で「赤→緑→赤」と色が巡る品種です。春の新芽と秋の紅葉という二度の赤を、間に挟まれた夏の青葉が引き立てる構図で、季節ごとに樹の前に立つ楽しみがあります。山もみじやイロハモミジなど種類による違いは山もみじ、イロハモミジのページでも確認できます。

もみじ「出猩々」— 赤い新芽に由来する名前
もみじ「出猩々(でしょうじょう)」は推定樹齢80年、幅85cm・高さ80cmで、5本の幹が立ち上がった姿がさわやかな印象を与える一点と紹介されています。品種名は、春先に鮮やかな赤色の新芽を出すことから、深い赤色を意味する「猩々緋(しょうじょうひ)」にちなんで名づけられたそうです。
出猩々の解説で語られているのは春の新芽の赤で、秋の紅葉には触れられていません。紅葉だけが赤の主役ではなく、品種によっては芽出しの赤が名前の由来になる、という点はもみじ鑑賞の豆知識として覚えておきたいところです。
数字で見る3点の姿
3点を解説の数字で並べると、紅陵は推定樹齢120年で幅120cm・高さ69cmと横に広がる姿、清玄は推定樹齢90年・高さ96cm、出猩々は推定樹齢80年で幅85cm・高さ80cmです。紅陵は3本の幹が扇状に広がり、出猩々は5本の幹が立ち上がる、と幹の構成も対照的で、同じもみじでも樹の姿はこれだけ違います。年齢の数字はいずれも「推定樹齢」と明記されています。
名前を手がかりに盆栽を見る
3点に共通するのは、銘や品種名が「赤」という色を軸にしていることです。紅陵は秋の紅葉、清玄は春と秋の二度の紅、出猩々は春の新芽。同じもみじでも、どの季節のどの赤に注目するかで名づけが変わります。展示で名札や解説を見かけたら、名前が何を指しているかを探すと、樹の見え方が変わってきます。
なお、紅葉の進み具合は地域や年、樹の置かれた環境によって異なるため、ここで紹介した解説は「この樹の紅葉の見頃が今いつか」を示すものではありません。実際に出かける際は、各園・美術館の最新の案内で展示内容を確認してください。
まとめ
もみじ盆栽の秋は、色づきそのものに加え、銘や品種名に込められた意味を知るとぐっと味わい深くなります。季節ごとの作業の目安は10月の盆栽管理で、秋の展示や盆栽園の情報はイベント情報と盆栽園マップでご覧いただけます。
