海外盆栽やろう 編集部

米ロングウッドガーデンズで初の盆栽フェスティバル開幕 — さつき40本とアジア域外最大コレクションの全貌

米ペンシルバニア州の名園ロングウッドガーデンズが2026年に相次いで盆栽の祭典を開催。アジア域外最大と称されるケネット・コレクションの至宝も並ぶさつき盆栽展示が6月15日に閉幕し、6月24日から初の盆栽フェスティバルが幕を開けます。67年の盆栽コレクション史を振り返ります。

さつき(皐月)の盆栽 — ロングウッドガーデンズの企画展に集まった40鉢の中で、鮮やかな花を咲かせた一品を連想させる
さつきは旧暦5月(さつき)に咲く花として名がついた日本原産のツツジ科常緑低木

米ペンシルバニア州ケネット・スクエアにある「ロングウッドガーデンズ(Longwood Gardens)」が、2026年の初夏に相次いで盆栽イベントを開催しています。5月27日から始まった「さつき盆栽展示(Satsuki Azalea Bonsai Display)」は6月15日に閉幕を迎え、続いて6月24日から6月29日までの6日間、同園史上初となる「盆栽フェスティバル(Longwood Gardens Bonsai Festival)」が開幕します。その舞台裏には、「アジア域外最大の盆栽コレクション」との出会いと、1959年に始まった67年の盆栽史があります。

旧暦5月が名の由来 — さつき盆栽40本の美

「さつき(皐月)」は旧暦5月を指す大和言葉です。日本古来の暦では旧暦5月が現在の6月前後にあたり、その時期に花を咲かせるツツジ科の低木(Rhododendron indicum)を「さつきつつじ」と呼んだのが始まりです。江戸時代には既に盆栽の代表花木として各地で愛培され、品種改良が重ねられてきました。現代のさつきは花色が白・紅・絞り・絣(かすり)模様と多様で、5〜6月には全国各地の「さつき展」で名品が披露されます。

ロングウッドガーデンズが今年5月27日〜6月15日に開催した「さつき盆栽展示」は、メインコンサバトリーの展示ホールに最大40鉢のさつき盆栽を並べる企画展です。展示作品には同園自身のコレクションに加え、後述のケネット・コレクション(The Kennett Collection)、そして「世界で最も影響力あるさつき盆栽師のひとり」と評される小林博晴氏(小林産業)の作品も含まれています。さつき特有の細かな花と古木感ある幹が共存する姿は、西洋の植物園を訪れる来場者に大きな驚きをもたらしています。

67年前、吉村佑二が植えた「盆栽という種子」

ロングウッドガーデンズは1906年、デュ・ポン社の御曹司ピエール・サミュエル・デュ・ポン(Pierre S. du Pont)が整備を始めた植物園で、現在の敷地は約1,100エーカー(約445ha)。年間来場者100万人超を誇る米国屈指の観光植物園です。盆栽との縁は1959年に始まります。当時、渡米して盆栽普及に尽力していた著名な盆栽師・吉村佑二(Yuji Yoshimura、1921〜1997年)がロングウッドで実演講座を開いたのがきっかけです。吉村は1957年に英語書籍『The Japanese Art of Miniature Trees and Landscapes』を出版し、米国人に盆栽を広めた先駆者のひとりです。

その講座は定員7名×11クラスが即日埋まり、30名をさらに断らざるを得なかったほどの盛況ぶりでした。手応えを得たロングウッドは吉村から13本の盆栽を購入し、コレクションを開始します。驚くべきことに、あれから67年が経った今も、その13本のうち4本 ——欅(ケヤキ)・銀杏(イチョウ)・サルスベリ・中国楡(シナニレ)——が同園の庭で生き続けています。現在のコレクション規模は約200本に拡大しています。

アジア域外最大の盆栽コレクション — ケネット・コレクションの衝撃

2022年、ロングウッドガーデンズに「変革的な遺贈」の知らせが届きました。「アジア域外で最大かつ最高水準の盆栽コレクション」と称される「ケネット・コレクション(The Kennett Collection)」から、約束贈与が申し出られたのです。ケネット・コレクションは実業家ダグ・ポール(Doug Paul)氏が1999年から収集を始めた個人コレクションで、1,200点超の盆栽を誇ります。日本の名匠による「木禧盆栽(きちょうぼんさい=重要盆栽名品)」から欧米で育てられた作品まで、あらゆる樹種・スタイル・サイズを網羅しています。

ロングウッドへの贈与は2段階で行われます。最初の贈与として50本の盆栽と年間維持支援金、続いて遺贈として木禧盆栽100本と100万ドルの管理基金が約束されています。キュレーターのケビン・ビエリッキ(Kevin Bielicki)氏は「盆栽は、時間そのものが媒体である数少ない芸術形式のひとつです(Bonsai Is One of the Few Art Forms That Is Really About Time)」と語り、このコレクションがロングウッドの盆栽収蔵を米国屈指の水準へ引き上げることを強調しています。

鮮やかなピンク色の花を咲かせた花物盆栽の寄せ植え — ロングウッドガーデンズのさつき展示に並ぶ多彩な花色の品種群を連想させる

初開催の盆栽フェスティバル — 東海岸7クラブが集う6月24〜29日

6月24日から始まる「初の盆栽フェスティバル」には、ペンシルバニア・ニュージャージー地域から7つの盆栽クラブが参加します。リーハイバレー盆栽協会・ブランディワイン盆栽協会・ディープカット盆栽協会・グレートスワンプ盆栽協会・ニュージャージー盆栽協会・ペンシルバニア盆栽協会・サスケハナ盆栽クラブの7団体です。フェスティバルでは参加クラブによる展示のほか、著名な盆栽師によるデモンストレーション・講演、販売ブース、オークション、作品審査と授与式が予定されています。米国東海岸の盆栽コミュニティが一堂に会する、同園史上初の専用イベントです。

豆知識 — 1959年に買った木が今も生きている、という奇跡

盆栽の世界では「盆栽師は、自分が完成を見ることのない木を植え続ける」という言葉があります。ロングウッドガーデンズが1959年に吉村佑二から購入した13本の盆栽のうち4本が、67年後の今も生き続けているという事実は、まさにその言葉を体現しています。欅(ケヤキ)は中でも長寿で知られる雑木盆栽の代表で、根張りと枝の広がりを育てるのに数十年を要します。「67年前に植えた木が今日のさつき展示を見守っている」という情景は、時間の流れを美に変える盆栽という芸術の本質そのものといえるかもしれません。

まとめ

ロングウッドガーデンズは1959年の吉村佑二との出会いから67年かけてコレクションを育て、2022年のケネット・コレクション遺贈で収蔵の質・量ともに飛躍し、2026年に初の専用フェスティバルを迎えます。6月24日から29日の盆栽フェスティバルは、米国東海岸の盆栽シーンを総覧できる貴重な機会です。渡航の機会がある方はぜひ立ち寄ってみてください(入場はロングウッドガーデンズの通常入園料に含まれます)。国内のさつき・花物盆栽の展示会情報は「盆栽やろう」の[イベントページ](/events/)から、全国の盆栽園・美術館の場所探しは[盆栽施設マップ](/map/)からどうぞ。さつきをはじめとした花物盆栽の特徴は[樹種ガイド](/guide/species/)でご確認いただけます。

出典

  1. [1]Longwood Gardens Receives Transformative Promised Bequest from The Kennett Collection, the Finest Private Collection of Bonsai Outside of Asia2022
  2. [2]Longwood Gardens Hosts Bonsai Festival, Marks Carillon's 25th Year — 102.9 WMGK2026
  3. [3]Discover a Rare Display of Satsuki Azalea Bonsai | Longwood Gardens2026

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