2026年の夏は、記録の更新が続いています。気象庁は8月3日、7月中旬から下旬にかけての顕著な高温について報道発表を行いました。ニュースで「観測史上」「過去最多」という言葉を目にする機会が増える中、全国の盆栽棚場でも、静かだけれど切実な攻防が続いています。遮光ネット越しの光、鉢の中の温度、朝夕の水やりのタイミング——2026年の記録的猛暑を、棚場の視点から見つめてみます。
「酷暑日」延べ34地点 — 記録ずくめの夏
日本気象協会(tenki.jp)の気象予報士コラムによれば、2026年8月4日までに全国で40℃以上を観測した「酷暑日」は延べ34地点に達し、これまで最多だった2025年の30地点を上回りました。気象庁も8月3日付の報道発表「2026年7月中旬〜下旬の顕著な高温と今後の見通しについて」で、この夏の高温傾向を取り上げています。
「酷暑日」は最高気温が40℃以上の日を指し、35℃以上の「猛暑日」よりもさらに一段厳しい暑さです。7月中旬から続く高温が8月に入っても衰えず、記録の更新が続いたというのが2026年の夏の特徴でした。棚場に立つ盆栽師にとっても、これまでの経験則が通用しにくい夏だったと言えそうです。
遮光ネットが灯す、棚場の陰影
この夏、各地の棚場では例年より早くから遮光ネットが張られました。盆栽専門サイト「盆栽日和」の解説によれば、夏場の遮光率の目安はおよそ50%程度、日差しの弱い春や秋には30%程度で十分とされています。ネット越しに差し込む光は棚の上に格子状の影を落とし、風が吹くたびにその影がゆっくりと揺れる——猛暑の年ほど、この陰影が濃く、くっきりと棚場に刻まれる気がします。
遮光ネットの色にも棚場ごとの個性があります。黒いネットは光を吸収して周囲の温度が上がりやすく、銀色のネットは光を反射して涼しさを保ちやすいとされ、使う色や張り方は棚場によってさまざまです。8月の具体的な管理ポイントは8月の作業で樹種横断的にまとめています。
松柏と雑木、暑さへの構えの違い
同じ棚場でも、樹種によって暑さへの構えは異なります。黒松のような松柏類は硬く厚みのある針葉を持ち、直射日光への耐性が比較的高いとされる一方、山もみじのような雑木類は葉が薄く、強い西日を浴び続けると葉先から茶色く縮れる葉焼けを起こしやすい木です。棚場の配置一つにも、こうした樹種ごとの個性が反映されています。
鉢の中の「もう一つの暑さ」
遮光ネットが防いでいるのは、葉に当たる強い光だけではありません。直射日光を浴び続けた鉢そのものも熱を帯び、鉢内の土の温度が想像以上に上がります。とくに黒色や濃色の鉢、素焼きの薄い鉢は熱がこもりやすいとされ、根にとっては地上部の葉焼け以上に厳しい環境になりかねません。棚場を歩くと、鉢に触れて温度を確かめる盆栽師の手つきを見かけることがあります。
苔と打ち水が呼ぶ、涼のひととき

猛暑の棚場に涼をもたらす存在として欠かせないのが苔です。鉢土の表面を覆う苔は水分を蓄え、急激な乾燥や地温の上昇を和らげるクッションのような役割を果たします。朝夕、棚場の床に打ち水をする光景も、この夏はいつもより多く見られました。気化熱で足元の温度を下げ、木々の周りの空気をわずかでも和らげようとする、昔ながらの知恵です。
打ち水の効果は科学的にも裏付けられており、水が蒸発する際に周囲の熱を奪う「気化冷却」の仕組みによるものです。江戸の町人文化に由来するとも言われる打ち水の習慣が、記録的猛暑の2026年、盆栽の棚場でも静かに息づいています。
まとめ
「酷暑日」延べ34地点という記録が示す通り、2026年の夏は例年にない厳しさでした。遮光ネットの陰影、樹種ごとの暑さへの構え、鉢の中の温度、苔と打ち水が呼ぶ涼——どれも派手さはありませんが、棚場の日々を支える小さな工夫の積み重ねです。全国の盆栽展示会・即売会の情報はイベントページから、盆栽美術館・盆栽園の場所は施設マップで検索できます。記録的な夏を越えた先に、実りの秋が待っています。
