Task Pillar
盆栽の針金掛け
基本原則
01原則: アルミ線が基本、銅線は松柏に限定
アルミ線は柔らかく扱いやすい初心者向け。銅線は固く保持力が強いが樹皮を傷つけやすい。雑木はアルミ、松柏は銅線 (焼き入れ後) が伝統。
02太さは「枝径の 1/3」が目安
細すぎると曲がらず、太すぎると樹皮を傷つける。枝の直径の 1/3 程度の太さの針金を選ぶ。2 本巻き (2 重) で同じ太さを足す手もある。
03巻き方は「45 度螺旋、内側から外側へ」
枝に対して 45 度の角度で螺旋状に巻く。間隔は均等に。太い方 (幹側) から細い方 (枝先) に向かって巻き、左右の手で曲げる。
04時期は樹種で違う
落葉樹 (もみじ・欅) は秋〜冬、葉が落ちて樹形が見えるとき。松柏は秋〜春、樹液の動きが鈍る冷涼期。花物は花後すぐは避ける。
05外し時を見極める
針金が枝に食い込み始めたらすぐ外す。樹皮に螺旋の跡が残るほど食い込むと、外しても傷跡が一生残る。3-6 ヶ月で要点検が基本。
06若い枝で形を決める
枝が若く柔らかいうちなら大きく曲がる。古枝・太枝は固くてポキッと折れるリスクが高い。樹形は若いうちに針金で「教える」のが定石。
07ラフィアで樹皮を守る
もみじ・欅など樹皮が薄い樹種は、針金を巻く前にラフィア (繊維材) を巻いて保護する。針金跡が直接樹皮に当たらなくなり、安全に大きく曲げられる。
樹種別の頻度・時期 (25 樹種)
- 松柏クロマツ1月・2月・11月・12月 ・ 適宜
アルミ線または銅線を、枝の太さの1/3程度の番手で巻き、ゆっくり曲げて樹形を作る。半年-1年で外す。
- 松柏ゴヨウマツ1月・2月・11月・12月 ・ 適宜
樹皮が薄く傷つきやすいため、紙テープや麻紐を巻いてから針金をかける。半年程度で確認。
- 松柏シンパク3月・4月・5月・6月・9月・10月・11月 ・ 適宜
アルミ線または銅線で曲げ込む。真柏は枝が柔軟で曲げやすい。半年-1年で外して跡を確認。
- 花物サツキ9月・10月・11月 ・ 適宜
花芽分化後、樹液流動が落ち着いた時期にかける。半年程度で外す。
- 松柏アカマツ1月・2月・11月・12月 ・ 適宜
アルミ線を使い、樹皮に食い込まないよう緩めに巻く。半年で確認。
- 雑木ケヤキ1月・2月・11月・12月 ・ 適宜
細い枝にアルミ線。1-2ヶ月で食い込み始めるので早めに外す。
- 花物ウメ5月・6月・7月・8月・9月 ・ 適宜
新梢がまだ柔らかい時期にアルミ線で曲げる。半年程度で外す。
- 花物フジ1月・2月・12月 ・ 適宜
アルミ線で蔓を曲げる。藤の蔓は柔軟で曲がりやすい。
- 実物ヒメリンゴ1月・2月・11月・12月 ・ 適宜
細枝にアルミ線。1-2ヶ月で外す。
- 実物ピラカンサ6月・7月・8月・9月 ・ 適宜
新梢が柔軟な夏期にアルミ線で曲げる。
- 雑木ヤマモミジ1月・2月・11月・12月 ・ 適宜
細い枝にアルミ線を巻く。1-2ヶ月で食い込み始めるため早めに外す。
- 花物サクラ1月・2月・11月・12月 ・ 適宜
落葉後の休眠期にアルミ線でかける。早期に外す。
- 花物ツバキ5月・6月・9月・10月 ・ 適宜
アルミ線で枝を曲げる。樹皮が薄いので食い込み防止に早めに外す。
- 花物ロウバイ6月・7月・8月・9月 ・ 適宜
新梢がまだ柔らかい時期にかける。半年で外す。
- 花物ボケ10月・11月 ・ 適宜
花芽形成後、樹液流動が落ち着いた秋にかける。
- 実物カキ1月・2月・11月・12月 ・ 適宜
落葉期にアルミ線で曲げる。1-2 ヶ月で確認。
- 松柏トショウ1月・2月・3月・10月・11月・12月 ・ 適宜
アルミ線・銅線で曲げる。樹皮丈夫で食い込み許容範囲広い。
- 雑木トウカエデ1月・2月・11月・12月 ・ 適宜
細枝にアルミ線。1-2 ヶ月で食い込み始める。
- 松柏エゾマツ1月・2月・11月・12月 ・ 必要時
樹液の動きが鈍る冬場に枝を整える。アルミ線推奨。
- 雑木デショウジョウ6月・7月・8月・9月 ・ 必要時
展開後で枝が落ち着いてから巻く。アルミ線推奨。
- 花物コウバイ6月・7月・8月・9月 ・ 必要時
葉が落ち着いてから細い枝に。古枝は固いので避ける。
- 花物レンギョウ6月・7月・8月・9月 ・ 必要時
枝が若く柔らかい時期に巻く。
- 実物ロウヤガキ9月・10月・11月・12月 ・ 必要時
葉が落ちて樹形が見える秋〜冬に。
- 実物グミ9月・10月・11月 ・ 必要時
実成り後の落ち着いた時期に。
- 雑木イチョウ9月・10月・11月・12月 ・ 必要時
アルミ線推奨。樹皮が傷つきやすいので保護用にラフィアを巻く。
道具・必要なもの
- 盆栽用アルミ線 (各種径)
- 0.8mm / 1.0mm / 1.5mm / 2.0mm / 2.5mm を一通り揃える。
- 盆栽用銅線 (松柏向け)
- アルミより保持力が強い。焼き入れ加工済のものを購入。
- 針金切り
- 刃が短く、枝に近い場所で切れる専用工具。普通のニッパでは樹皮を傷つける。
- ラフィア
- 太枝を強く曲げる前の樹皮保護に。水で湿らせて巻く。
よくある失敗
太すぎる針金 → 樹皮にめり込んで一生消えない跡
外し忘れ (半年放置) → 食い込んで樹皮が螺旋状にえぐれる
古枝に強引に針金 → ポキッと折れて取り返しがつかない
夏場の針金掛け → 樹皮が柔らかく傷つきやすい
間隔がガタガタ → 力が均等にかからず、曲げが不均等に
参考
- [1]日本盆栽協同組合 — 針金掛けの基礎 ・ 業界標準的な針金技法
- [2]近代出版『盆栽世界』 整姿実務
- [3]国風盆栽展カタログ — 樹形解説