Task Pillar
盆栽の消毒 (病害虫予防)
基本原則
01原則: 月 1 回の定期予防散布
病害虫が出てから対応するのは後手になる。5-9 月の生長期は月 1 回、汎用の殺虫殺菌剤を散布。早期発見・早期対応より、そもそも発生させない予防が効果的。
02主要害虫 3 種を覚える
アブラムシ (新芽に群がる、ベタつく排泄物)、カイガラムシ (枝に白い綿状/茶色い貝殻状)、ハダニ (葉裏のサビ色・葉の白化)。それぞれに対する薬剤が違う。
03主要病害 2 種を覚える
うどんこ病 (葉に白い粉、もみじ・梅で多発)、葉枯れ病 (松柏で松葉が褐変)。湿度の高い梅雨期と猛暑期に発生しやすい。
04散布タイミングは「気温が上がる前か下がった後」
早朝または夕方、無風時に散布。日中の高温時は薬害 (葉焼け) のリスクが高い。雨予報の前日は薬剤が流れるので避ける。
05薬剤は「使い分け」が必要
ダコニール (殺菌、広域)、オルトラン (殺虫、浸透移行)、ハダニ用 (粘着くん・コロマイト等)。1 種類のみだと耐性害虫が増えるので 2-3 種をローテーション。
06樹種別の弱点を把握
もみじはうどんこ病・ハダニ、梅はアブラムシ・縮葉病、松柏はカイガラムシ・葉枯れ病、実物はアブラムシ・カイガラムシ。樹種ガイドの「消毒」項目で個別に確認。
07薬剤の登録状況を確認
盆栽は「観賞用樹木」扱いだが、食用にしない実物にも厳密には農薬登録が必要。混用する場合は「混用可能リスト」を確認し、不明なら単独散布で安全側に倒す。
樹種別の頻度・時期 (33 樹種)
- 松柏クロマツ3月・4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月・11月 ・ 月1回程度
マツカレハ・マツノキバチ・葉枯れ病に対し、殺虫殺菌剤を散布。発生前の予防散布が効果的。
- 松柏ゴヨウマツ3月・4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月・11月 ・ 月1回程度
ハダニ・カイガラムシ・葉枯れ病に注意。殺虫殺菌剤を予防散布。
- 松柏シンパク3月・4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月・11月 ・ 月1回程度
ハダニ・葉ダニ・赤星病に注意。風通しの悪い棚では月2回散布も検討。
- 花物サツキ4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1-2回
グンバイムシ・ハダニ・葉斑病に注意。特にグンバイムシは葉裏に発生し樹勢を著しく落とす。
- 松柏アカマツ3月・4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月・11月 ・ 月1回程度
マツカレハ・赤枯病に注意。予防散布が効果的。
- 雑木ケヤキ4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1回程度
アブラムシ・うどんこ病に注意。新葉時期はアブラムシが特に多い。
- 花物ウメ3月・4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1-2回
うどんこ病・アブラムシ・カイガラムシに注意。冬の石灰硫黄合剤散布も有効。
- 花物フジ4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1回程度
アブラムシ・カイガラムシ・コガネムシに注意。
- 実物ヒメリンゴ3月・4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1-2回
うどんこ病・赤星病・カイガラムシ・アブラムシに注意。
- 実物ピラカンサ4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1回程度
アブラムシ・カイガラムシ・ハダニに注意。
- 雑木ヤマモミジ4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1回程度
アブラムシ・うどんこ病・カミキリムシに注意。新葉展開時はアブラムシ、梅雨はうどんこ病が出やすい。
- 花物サクラ4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1-2回
毛虫類(マイマイガ等)・アブラムシ・カイガラムシ・うどんこ病・すす病に注意。
- 花物ツバキ4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1-2回
チャドクガに最大の警戒。毛に毒があり人体に皮膚炎を起こす。葉斑病・カイガラムシも注意。
- 花物ロウバイ4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1回
うどんこ病・カイガラムシ・アブラムシに注意。
- 花物ボケ3月・4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1-2回
アブラムシ・赤星病・うどんこ病に注意。とくに赤星病は真柏との隔離も併用。
- 実物カキ4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1回
カイガラムシ・葉斑病・ヘタ虫(柿実食害虫)に注意。
- 松柏トショウ4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1回
ハダニ・赤星病・マツカレハ類に注意。
- 雑木トウカエデ4月・5月・6月・7月・8月・9月・10月 ・ 月1回
アブラムシ・うどんこ病・カイガラムシ・カミキリムシに注意。
- 松柏エゾマツ4月・5月・6月・7月・8月・9月 ・ 月1回
ハダニ・カイガラムシ・葉枯れ病の予防に殺虫殺菌剤を散布。
- 雑木デショウジョウ5月・6月・7月・8月・9月 ・ 月1回
うどんこ病・アブラムシの予防にダコニール等。
- 花物コウバイ4月・5月・6月・7月・8月・9月 ・ 月1回
アブラムシ・うどんこ病・縮葉病に対応。
- 花物レンギョウ5月・6月・7月・8月・9月 ・ 月1回
ハダニ・アブラムシの予防に。
- 実物ロウヤガキ5月・6月・7月・8月・9月 ・ 月1回
カイガラムシ・うどんこ病に対応。
- 実物グミ5月・6月・7月・8月・9月 ・ 月1回
アブラムシ・カイガラムシの予防に。
- 雑木イチョウ5月・6月・7月・8月・9月 ・ 月1回
予防散布。
- 花物チョウジュバイ4月・5月・6月 ・ 毎年
うどんこ病・カイガラムシに注意。早期予防散布。
- 花物ヤバイ3月・4月・5月・6月 ・ 毎年
アブラムシ・うどんこ病に注意。芽吹き前と新葉展開時に予防散布。
- 実物ベニシタン4月・5月・6月 ・ 毎年
アブラムシ・うどんこ病の予防散布。
- 雑木ツゲ4月・5月・6月 ・ 毎年
ハマキムシ・ツゲノメイガに注意。早期予防散布。
- 花物カイドウ4月・5月・6月 ・ 毎年
アブラムシ・赤星病に注意。新葉展開時に予防散布。
- 花物ハナミズキ5月・6月・7月 ・ 毎年
うどんこ病に注意。風通しを確保して予防。
- 実物ナンテン5月・6月 ・ 毎年
カイガラムシ・うどんこ病に注意。
- 実物ウメモドキ5月・6月・7月 ・ 毎年
うどんこ病・カイガラムシの予防散布。
道具・必要なもの
- 蓄圧式噴霧器 (1-2L)
- 盆栽棚規模なら 1L で十分。レバーで圧をかけてシュッシュ。
- 目盛り付き計量カップ
- 薬剤希釈用。1000 倍など希釈率を正確に。
- ゴム手袋 + マスク
- 薬剤は皮膚・吸入経路で害がある。希釈・散布時は必ず装着。
- ローテーション用薬剤 3 種
- 殺菌系 (ダコニール) / 殺虫系 (オルトラン) / ハダニ専用 (粘着くん 等) を 1 シーズン使い回す。
よくある失敗
発生してから慌てて散布 → 既に深く侵食、回復に数ヶ月
希釈率を間違えて濃いめ → 薬害で葉焼け・落葉
日中の高温時に散布 → 薬害リスク + 薬剤揮発で効果半減
雨の前日に散布 → 薬剤が流れて無駄
1 種類のみ繰り返し使用 → 耐性害虫が出現して効きが落ちる
参考
- [1]日本盆栽協同組合 — 病害虫対策 ・ 業界標準的な散布カレンダー
- [2]近代出版『盆栽世界』 病害虫実務
- [3]農文協『花木と果樹の病害虫図鑑』