Task Pillar
盆栽の剪定
基本原則
01原則: 太枝→中枝→小枝の順で見る
全体の骨格を決める太枝の整理を冬の落葉期にまず済ませ、生長期に中枝・小枝を整える。逆順だと細部に手を入れた後で太枝を切る羽目になり、無駄な労力になる。
02「忌み枝」を覚える
交差枝・車枝・逆枝・閂枝 (かんぬきえだ) ・かんざし枝 — これらは樹形を乱す。盆栽の最初の整理はまずこれらを抜くだけで樹姿が劇的に整う。
03切る位置は「節の上、芽の向きで決める」
新芽の向きで次に伸びる方向が決まる。外側に向いた芽を残して切ると枝が広がり、内側を残すと密集する。樹形の意図に合わせて選ぶ。
04落葉期 (12-2月) と生長期で役割が違う
落葉期は「骨格剪定」: 全体の枝筋を見て大胆に整理。生長期 (4-9月) は「整姿剪定」: 飛び出した枝先を整える程度に留め、樹液を出す太枝の剪定は避ける。
05切り口に癒合剤
径 5mm 以上の枝を切ったら、トップジン M ペースト等の癒合剤を塗布。雨水侵入や雑菌の侵入を防ぎ、太枝の枯れ込み・幹のえぐれを予防する。
06樹種で「切れる量」が違う
雑木 (もみじ・欅) は積極的に切って構わない (萌芽力が強い)。松柏は控えめに、古い枝はほぼ切らず葉数で調整。花物・実物は花芽・短果枝を残すように切る。
07弱った樹には剪定しない
黄化・落葉が多い・生長が弱い樹に切るストレスを与えると枯れる。まず施肥と水やりで回復させ、樹勢が戻ってから剪定する。
樹種別の頻度・時期 (52 樹種)
- 松柏クロマツ1月・2月・11月・12月 ・ 毎年
休眠期に不要枝(忌み枝・かんぬき枝・車枝)を整理し、樹姿の骨格を作る。太い枝は癒合剤を塗る。
- 松柏ゴヨウマツ11月・12月 ・ 毎年
不要枝の整理は11-12月の休眠期に。太枝の切除は慎重に、必ず癒合剤を塗布。
- 松柏シンパク3月・4月・5月・6月・9月・10月 ・ 毎年
不要枝・忌み枝を整理。太枝はシャリ加工(枝の一部を白骨化)に転用できる。
- 花物サツキ6月 ・ 毎年
花後すぐに強剪定。樹冠から飛び出した枝を整理し、樹姿を整える。
- 松柏アカマツ1月・2月・11月・12月 ・ 毎年
休眠期に忌み枝整理。太枝は癒合剤を必ず塗布。
- 雑木ケヤキ1月・2月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後、不要枝と忌み枝を整理。ほうき立ちは細枝の重なりを丁寧に解く。
- 花物ウメ3月 ・ 毎年
花後すぐに強剪定。徒長した新梢は2-3節残して切り戻す。
- 花物フジ1月・7月・8月・12月 ・ 毎年
花後の徒長枝を 7-8 月に切り戻し、冬は短果枝の整理。
- 実物ヒメリンゴ1月・2月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後に不要枝を整理。短果枝は残し、徒長枝を切る。
- 実物ピラカンサ1月・2月・6月・12月 ・ 毎年
花後(6月)と冬(12-2月)に不要枝を整理。
- 雑木ヤマモミジ1月・2月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後、樹形を見ながら不要枝を整理。太枝は癒合剤を必ず塗布。
- 花物サクラ4月・5月 ・ 毎年
花後すぐに枝先を切り戻し、不要枝を整理。徒長枝は元から切る。
- 花物ツバキ4月・5月 ・ 毎年
花後すぐに不要枝を整理。徒長枝は短く切り戻す。
- 花物ロウバイ3月 ・ 毎年
花後すぐに徒長枝を切り戻し、樹冠を整える。
- 花物ボケ1月・5月・6月・12月 ・ 毎年
花後 (5-6月) に徒長枝を切り戻し、冬 (12-1月) に短果枝の整理。
- 実物カキ1月・2月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後に不要枝を整理。短果枝は残し、徒長枝を切る。
- 松柏トショウ3月・4月・5月・6月・9月・10月 ・ 毎年
不要枝・忌み枝を整理。太枝はシャリ加工に活用する発想で。
- 雑木トウカエデ1月・2月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後に不要枝・忌み枝を整理。太枝は癒合剤塗布。
- 雑木デショウジョウ1月・2月・12月 ・ 毎年
落葉期に徒長枝を切り戻し樹形を整える。
- 花物コウバイ3月・4月 ・ 毎年
花後すぐに、咲き終わった枝を 2-3 節残して切り戻す。
- 花物レンギョウ3月・4月 ・ 毎年
花が終わった枝を1/2切り戻す。蔓性の暴れ枝を整理。
- 実物ロウヤガキ1月・2月・12月 ・ 毎年
落葉期に徒長枝を切り戻し、短果枝を残す。
- 実物グミ1月・2月・3月・12月 ・ 毎年
落葉/葉が少なくなる時期に徒長枝を整理。
- 雑木イチョウ1月・2月・12月 ・ 毎年
落葉期に徒長枝を切り戻し、短い枝筋を作る。
- 雑木イロハモミジ1月・2月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後の休眠期に、徒長枝・忌み枝(平行枝・かんぬき枝等)を整理する。
- 雑木シシガシラ1月・2月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後の休眠期に枝の整理と忌み枝の処理。葉が密集する品種なので、内部の混み合った枝も間引く。
- 雑木イソザンショウ5月・6月 ・ 毎年
新芽が伸びすぎる前に芽摘み・剪定で樹形を整える。
- 松柏ヒノキ10月・11月 ・ 毎年
秋に枝の長さと密度を整える剪定。徒長した枝や交差枝を除く。
- 松柏ツヤマヒノキ5月・6月・9月・10月 ・ 通年
伸びた枝先を整える程度の軽剪定。強剪定は樹勢を著しく弱める。
- 雑木ニレケヤキ4月・5月・6月・7月・8月・9月 ・ 通年
新芽が固まるごとに枝先を 2-3 節残して切り戻す。
- 雑木チリメンカズラ5月・6月・7月・8月・9月 ・ 通年
伸びた蔓を切り戻して樹形を保つ。仕立て方によっては支柱に巻きつかせる。
- 雑木ニオイカエデ1月・2月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後の休眠期に枝の整理。
- 雑木トネリコ1月・2月・5月・6月・11月・12月 ・ 毎年
新緑期と落葉後に枝の整理。複葉の節を意識して切る。
- 花物テイカカズラ6月・7月 ・ 毎年
花後すぐに伸びた蔓を切り戻して樹形を整える。
- 花物チョウジュバイ6月・7月・11月・12月 ・ 毎年
春花後と秋花後に伸びすぎた枝を切り戻す。
- 花物ヤバイ3月・11月・12月 ・ 毎年
花後と落葉後に剪定。花芽は前年枝の短枝につくので、長く伸びた徒長枝のみ切る。
- 花物オウバイ3月・4月 ・ 毎年
花後すぐに切り戻し。徒長した蔓は半分ほどに切り詰める。
- 花物サンシュユ3月・4月・11月・12月 ・ 毎年
花後と落葉後に枝の整理。花芽は前年枝に付くので長く伸びた徒長枝を切る。
- 実物キンシナンテン4月・5月・6月 ・ 通年
伸びすぎた茎を地際から切る or 短く切り詰める。
- 実物アケビ3月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後と早春に蔓の整理。花芽は前年枝の短枝に付くので長い徒長枝を切る。
- 実物ツルウメモドキ3月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後と早春に蔓の整理。長く伸びた徒長枝を切る。
- 実物ベニシタン3月・4月・6月・7月 ・ 通年
花後と新緑後に伸びた枝を切り戻す。
- 実物キンズ4月・5月・6月 ・ 毎年
花後・実後に伸びた徒長枝を切り戻す。
- 実物ビナンカズラ3月・11月・12月 ・ 毎年
落葉期(常緑だが旧葉が落ちる時期)に蔓の整理。
- 雑木イヌツゲ4月・5月・6月・7月・8月・9月 ・ 通年
伸びた新芽を 2-3 節残して切り戻す。刈り込みで自在に樹形が作れる。
- 雑木ツゲ5月・6月・9月 ・ 毎年
新緑期と秋に枝先を切り戻す。刈り込み耐性は高い。
- 花物アジサイ7月 ・ 毎年
花後すぐ (梅雨明け前) に剪定。花が付いた枝の下 2-3 節で切り戻す。
- 花物アセビ4月・5月 ・ 毎年
花後すぐに伸びすぎた枝を整理。花芽は夏に分化するので、夏以降の強剪定は避ける。
- 花物カイドウ4月・5月・11月・12月 ・ 毎年
花後と落葉後に剪定。花芽は前年枝の短枝に付くので、長く伸びた徒長枝のみ切る。
- 花物ハナミズキ1月・2月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後の休眠期に枝の整理。花芽は前年枝の短枝に付く。
- 実物ナンテン1月・2月・4月・5月・12月 ・ 毎年
幹が分枝しにくいため、伸びすぎた茎を地際から切ることで新しい茎の更新を促す。
- 実物ウメモドキ1月・2月・3月・11月・12月 ・ 毎年
落葉後と早春に剪定。花芽 (=実になる) は前年枝の短枝に付くので、徒長枝のみ整理する。
道具・必要なもの
- 盆栽専用剪定ばさみ
- 刃が薄く狭い箇所まで届く。普通の園芸ばさみより細部向き。
- 枝切りばさみ (太枝用)
- 径 1cm 以上の太枝用。刃が分厚く梃子が効く。
- コブ切り (へこみばさみ)
- 幹直近で枝を切る時、後で目立たない傷にするための専用ばさみ。
- 癒合剤 (トップジン M ペースト)
- 切り口の保護に。100ml チューブで数年もつ。
よくある失敗
節の中間で切る → 枯れ込みが起きて見栄えが悪くなる
夏場に太枝剪定 → 樹液が止まらず樹勢を消耗
弱った樹を「整える」と剪定 → 致命傷になる
癒合剤を塗らない → 太枝の切り口が幹までえぐれる
切り過ぎ → 樹勢回復に数年かかる。年に総葉量の 1/3 以上は切らない
参考
- [1]日本盆栽協同組合 — 剪定の基礎 ・ 業界標準的な剪定指針
- [2]近代出版『盆栽世界』 樹種別剪定実務
- [3]農文協『盆栽の手入れ』