Task Pillar
盆栽の施肥 (肥料)
基本原則
01原則: 「春の施肥で 1 年が決まる」
成長期の入口 (3-5 月) の施肥が、その年の枝の伸びと葉色を決める。逆に夏の高温期 (7-8 月) は休止、秋 (9-10 月) に「お礼肥」で来年に向けた体力回復、冬は与えない、というのが基本サイクル。
02油粕系 (固形・有機) が基本
鉢の縁に置く固形の有機肥料 (油粕、骨粉ブレンド) が長く緩やかに効くため盆栽向き。月 1 回交換、雨で流れたら追加。臭いとコバエが気になる場合は化成肥料の置き肥に切り替え可能。
03液肥は「速攻補助」として使う
ハイポネックス等の液体肥料は薄めて 1-2 週に 1 回、急いで葉色を回復したい時や鉢替え後の体力回復に使う。固形肥料の代わりではなく、上乗せの補助と考える。
04施肥しない期間を覚える
(1) 植え替え直後 1 ヶ月: 切り詰めた根が肥料焼けする。(2) 真夏の猛暑期 (7-8 月): 樹が休眠状態に近く、根が吸えない。(3) 冬 (12-2 月): 落葉樹は完全休眠、常緑樹も成長停止。(4) 弱っている樹: 肥料は薬ではなく追い打ちになる。
05樹種で配合が変わる
松柏は窒素を控えめに、リン酸・カリ多めで葉の引き締めを促す。雑木 (もみじ・欅) は窒素やや多めで葉色を保つ。花物 (さつき) は花後に「お礼肥」を必ず、リン酸を含む配合で来年の花芽分化を助ける。実物 (姫リンゴ・ピラカンサ) は実が膨らむ前後でリン・カリを補強。
06「足し算より引き算」の発想
肥効が出すぎた合図 — 葉が大きく薄い緑になる、節間 (葉と葉の間) が間延びする、徒長枝が垂直に伸びる — が出たら、肥料を引く方向に修正する。盆栽は枝を「詰める」のが目的で、伸ばすのではない。
樹種別の頻度・時期 (54 樹種)
- 松柏クロマツ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 月1回程度
固形油粕主体の有機肥料を鉢縁に置く。盛夏と厳冬期は休ませる。芽切り予定木は5-6月の肥料を多めに。
- 松柏ゴヨウマツ3月・4月・5月・6月・9月・10月 ・ 月1回程度
黒松より薄めの有機肥料を施す。盛夏と厳冬期は休ませる。
- 松柏シンパク4月・5月・6月・9月・10月 ・ 月1回程度
固形有機肥料を鉢縁に置く。盛夏と厳冬期は休ませる。
- 花物サツキ4月・5月・9月・10月 ・ 月1-2回
酸性肥料(さつき専用肥料)または油粕を薄めに。花後の追肥と秋の元肥が重要。
- 松柏アカマツ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 月1回程度
黒松より薄めの有機肥料を施す。
- 雑木ケヤキ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 月1回程度
固形油粕。葉刈り前後と秋の元肥が特に重要。
- 花物ウメ3月・9月・10月 ・ 月1回程度
花後すぐの追肥と、秋の元肥が重要。盛夏は休ませる。
- 花物フジ5月・6月・9月・10月 ・ 月1回程度
花後の追肥(5-6月)と秋の元肥(9-10月)。リン酸多めの肥料。
- 実物ヒメリンゴ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 月1-2回
固形油粕を多めに。リン酸・カリ強化で実成りを促進。
- 実物ピラカンサ4月・5月・9月・10月 ・ 月1回程度
固形油粕。実成りにはリン酸・カリ強化。
- 雑木ヤマモミジ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 月1回程度
固形油粕を鉢縁に置く。葉刈り前後と紅葉前(9-10月)は特に重要。
- 花物サクラ3月・5月・9月・10月 ・ 月1回
花後の追肥(5月)と秋の元肥(9-10月)。盛夏は休ませる。
- 花物ツバキ4月・5月・9月・10月 ・ 月1回
酸性肥料 (椿/さつき用肥料) を薄めに。盛夏と厳冬は休ませる。
- 花物ロウバイ4月・5月・9月・10月 ・ 月1回
固形油粕を薄めに。リン酸多めで花付きを促す。
- 花物ボケ4月・9月・10月 ・ 月1回
固形油粕を中程度に。リン酸・カリ強化で花付き向上。
- 実物カキ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 月1-2回
固形油粕に骨粉を混ぜて。リン酸・カリ強化で実成り促進。
- 松柏トショウ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 月1回
固形油粕を中程度に。
- 雑木トウカエデ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 月1回
固形油粕。葉刈り前後と紅葉前(9-10月)が重要。
- 松柏エゾマツ4月・5月・9月・10月 ・ 春と秋
春は油粕の固形を鉢縁に。秋はお礼肥として少量。
- 雑木デショウジョウ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 春と秋
春は窒素やや多めで葉色を作る。秋はリン酸補強。
- 花物コウバイ4月・5月・9月・10月 ・ 春と秋
花後のお礼肥を厚めに。秋にリン酸で花芽形成を助ける。
- 花物レンギョウ4月・5月・9月・10月 ・ 春と秋
花後のお礼肥を多めに。秋にリン酸補強。
- 実物ロウヤガキ4月・5月・9月・10月 ・ 春と秋
秋にリン酸・カリ補強で来年の花芽形成を助ける。
- 実物グミ4月・5月・9月・10月 ・ 春と秋
秋のお礼肥を厚めに。
- 雑木イチョウ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 春と秋
窒素多めで葉を作る。秋はリン酸・カリで紅葉を綺麗に。
- 雑木イソザンショウ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かすなどの緩効性肥料を置肥。花後の樹勢回復に追肥も有効。
- 松柏ヒノキ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かすを少量。盛夏と厳冬は控える。
- 松柏セッカヒノキ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
通常品種の半量目安。緩効性の固形肥料を少量。
- 松柏ツヤマヒノキ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かすを控えめに。盛夏・厳冬は施肥しない。
- 松柏ニシキマツ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
通常黒松の半量目安。盛夏は中止。
- 雑木ニレケヤキ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 毎年
春から初夏、秋に固形油かすを月 1 回。盛夏は控える。
- 雑木チリメンカズラ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に控えめに固形肥料。
- 雑木トネリコ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 毎年
春から初夏、秋に固形油かすを月 1 回。
- 花物テイカカズラ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かすを置肥。
- 花物チョウジュバイ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かすを置肥。リン酸多めだとなお良い。
- 花物ヤバイ3月・4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋にしっかり施肥。リン酸多めの肥料も併用。
- 花物オウバイ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かすを置肥。
- 花物サンシュユ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かす。リン酸を含む肥料も併用すると実付きが良くなる。
- 実物キンシナンテン4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かすを控えめに。
- 実物アケビ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かす。
- 実物ツルウメモドキ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かす。
- 実物ベニシタン4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かす。
- 実物キンズ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 毎年
春から初夏、秋に固形油かす。リン酸を含む肥料も併用。
- 実物ビナンカズラ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かす。
- 松柏イトヒバ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かすを少量。盛夏と厳冬は控える。
- 松柏ハイビャクシン4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かす。盛夏・厳冬は控える。
- 雑木イヌツゲ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 毎年
春から初夏、秋に固形油かすを月 1 回。
- 雑木ツゲ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かすを控えめに。
- 花物アジサイ3月・4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かす。花色を青く保ちたい場合は酸性肥料を併用。
- 花物アセビ3月・4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に酸性肥料 (鹿沼土系) を中心に。
- 花物カイドウ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋にしっかり施肥。リン酸を含む肥料で花付きを促す。
- 花物ハナミズキ4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かす。リン酸を含む肥料で花付きを促す。
- 実物ナンテン4月・5月・9月・10月 ・ 毎年
春と秋に固形油かす。
- 実物ウメモドキ4月・5月・6月・9月・10月 ・ 毎年
春から初夏、秋に固形油かす。リン酸を含む肥料も併用すると実付きが向上。
道具・必要なもの
- 固形油粕ペレット
- 市販の「玉肥」「ぼかし肥」。粒は 8-15mm 程度を鉢縁に並べる。
- 肥料置きカップ (プラ製)
- 鉢底ネットの切れ端でも代用可。直接土に置くより蒸れず、コバエも寄りにくい。
- 液体肥料 (ハイポネックス等)
- 1000 倍希釈が基本。濃いめにすると肥料焼け。
よくある失敗
庭木と同じ感覚で「春に元肥どっさり」 → 徒長して節間が間延び、樹姿が崩れる
植え替え直後に施肥 → 根が肥料焼けで枯れる
弱っている樹に「元気つけ」で施肥 → さらに弱る (肥料は健康な樹だけが消化できる)
猛暑期に固形肥料を載せたまま放置 → 高温で発酵し根を傷める
「念のため」で複数種を同時に与える → 過剰になりやすい
参考
- [1]日本盆栽協同組合 — 肥料と土 ・ 業界標準的な施肥カレンダー
- [2]近代出版『盆栽世界』 月別施肥指針
- [3]農文協『盆栽の手入れ』